第一章 オリュンポス以前の世界
第一節 天地生成と世界の初め
ヘーシオドスは、自生型のフェニキア人の天地開闢神話
ヘーシオドスの創世記:「カオス」からの始まり
ヘーシオドスは彼の創世記を、・・・ようやく一一六行目から
「いかにも最初にまずできたのはカオス」で、それから今度は、「広い胸をしたガイア(大地)ができた、万物のとわに揺がぬ座であるところの」と歌いだす。p29
神々創造のオリエント系でなく自然発生のフェニキア系(ピローンの神話)
この一段は先に神々の誕生を述べるオリエント系の創世記よりもやや哲学的な、フェニキアなどに見る(一世紀の哲学者ピローンが太古のフェニキア史として記録するような)、世界の初めを一面の煙霧と暗闇とし、その混和から引き続いて「あこがれ」ポトスが生じた、とする別な創造説話にそっくりである。すなわちここ(ヘーシオドス)でも、このガイア(つづめてしばしばゲーとも)とともに、地底にあっておぼろにかすむタルタロスと、「愛」エロースとができたとし、一方また別にカオスからエレボス(幽冥界)と、か黒い「夜」ニュクスとが生れたという。p29-30
これはヘーシドスが、ボイオーティア人であるから、フェニキア神話の影響を色濃く受けたのであろう。
闇から光へ
この「夜」がさきの「幽冥」エレボスとの愛において結ばれ、逆説的に
高空の光と輝きに満ちた「こう気」アイテールと、「昼日」ヘーメラーを生んだとする。p30
光の存在が闇落ちする創造系の独善的一神教的神話ではなく、闇や混沌から、光や秩序が生まれるという自然発生的神話である。
ガイアがウラノスを産む
一方「大地」ガイアはまず、星をちりばめた「天空」ウーラノスを産み、おのが身の上を覆わしめた。p30
ここでも女性上位である。女系相続社会の反映であろう。
山々や海ポントスをガイアがひとりで産む
それから高い山々、波の逆巻く海原ポントスなどで、ひとりでもって産んだが、p30
自然も女性(大地女神)の単性創造である。
ティーターン族の誕生
このティーターン族は、貴族の誕生を投影しているのであろう。
北方から陸路南下した原ギリシア人(テッサリア人の祖・アイオロス王家の祖)と、
リビュアのアトランティスの領域から北上したプロト・フェニキア人とが、出会って、貴族階級を形成する。
ティーターン族は、のちのギガースとは違い、神々の先祖である。
最後にクロノスを末子とする兄弟姉妹を産む(ティーターン族)
その後ウーラノスと一緒に寝て、ふかく渦巻くオーケアノスや、コイオス、クリーオス、ヒュペリーオーン、イーアペトスらの息子、テイアー、レイアー(レアー)、テミス(法)、ムネーモシュネー(記憶)、ポイベー、テーテュースらの娘を産み、さらに最後に、いちばん年若ながら「狡知に長けた」クロノスを産み落とした、という。
これらがいわゆるティーターンの一族(よく巨人族と訳される)、英語のタイタンどもである。
ティーターン族
息子たち6人
①オーケアノス:
②コイオス:Κοῖος:「天球」「天の極」とも。
ポイベーを妻とし、レートー(アポローンとアルテミスの母)、アステリアー(ヘカテーの母)の姉妹をもうけた。
③クリーオス=クレイオス:Κρεῖος:「天の雄羊」
アストライオス、ペルセース、パラースの父として捏造された。
「天の雄羊」というへんてこな名がそれを示している。
アストライオスは風神・星神の父。こちらは神として実在性があり、この捏造神に「接ぎ木」されたもよう。
ペルセースは捏造神である。アステリアーを妻としヘカテーをもうけたことにしている。
アステリアーとヘカテーは実在の神。この捏造神に「接ぎ木」された。
ペルセースの実体は、捏造神ペルセウスの子でペルシア人の先祖として捏造された捏造神であり、
アテーナイ捏造班の作品で、ヘーリオスとペルセーイス(こちらも捏造女神)の間の子とされ、
兄弟姉妹に、コルキス王アイエーテース、魔女キルケー、ミーノースの妻パーシパエーがいる。
これらは、捏造接ぎ木でアテーナイ捏造班側の神である。
アイエーテースの娘がメデイアで、メディア帝国から捏造された。
④ヒュペリーオーン:Ὑπερίων:「高みを行くもの」
ヘーリオスの呼称から捏造された分身神。
⑤イーアペトス:Ἰάπετος:名前は外来のものと思われ不詳
石から来たのであろうか。こちらは実在神であろう。
オーケアノスの娘クリュメネーとの間に、アトラース、メノイティオス、プロメーテウス、エピメーテウスを生んだ。
タルタロスに落とされ、常にゼウスの敵であることから、外来の実在神と想定される。
「ヤペテ」から捏造されたようだ。
⑥クロノス:
娘たち6人
①テイアー:Θεία
ヒュペリーオーンの妻で、ヘーリオス、セレネー、エーオース(暁)の母。
②レイアー(レアー):Ῥέα
クロノスの妻で、ヘスティアー、デーメーテール、ヘーラー、ハーデース、ポセイドーン、ゼウスの母。
アナトリアーの大地母神が起源らしい。
その象徴が、ライオン、小塔冠、豊穣の角ということから、アナトリアーからクレタ島経由で、ギリシア本土に上陸した大地母神であろう。
キュベレーの前身であろう。
③テミス(法):Θέμις:「不変なる掟」
ゼウスの二番目の妻。
エウノミアー(秩序)、ディケー(正義)、エイレーネー(平和)の母。
ピュートーンの託宣所の主ともされるが、あやしい。
④ムネーモシュネー(記憶):Μνημοσύνη:「記憶」
記憶の擬人化。擬神化か。
⑤ポイベー:Φοίβη:「輝ける女」「光明神」
同名の女神が、ヘーリオスの娘、レーダーの娘でヘレネーの姉妹、レウキッポスの娘でディオスクーロイの妻にも存在する。
⑥テーテュース:Τηθύς:不明
オーケアノスの妻で、オーケアニデスの母。
ヘーラーをクロノスから匿ったとされ、ヘーラーの乳母ともいわれる。
キュクロープスとヘカトンケイレス
ガイアはさらに、キュクロープス(円い目の噴火山の擬人化)の一族、すなわちブロンテース(雷霆)にステロペース(雷光)に、アルゲース〈白熱の光輝)の三人、
およびやはり三人の百腕の怪人ヘカトンケイレス、・・・を産み落とした。
アポロドーロスの生産順序は逆:クロノス最末子
この生産順序は、アポロドーロスでは逆さまになって、まず、ヘカトンケイレス、つぎにキュクローペース、つぎにティーターネスとなっている・・・。
(キュクローペースはキュクロープスの複数形、ティーターネスも複数形、つまり、アポロドーロスは、クロノスを最末子としたのだ。)
クロノスもゼウスも末子である。これは末子相続の投影であろう。
いずれにせよ、フェニキア人の神統記では、自然世界が自生して、次に生まれるのが、
ティーターン族、これは、文明人プロト・フェニキア人の投影であろう。
ウーラノスとガイアの結婚から生れた12柱のティーターン族が、フェニキア貴族の投影、
キュクローペースが、冶金集団の投影、
ヘカトンケイレスが、建築集団の投影であろう。
別系統の神話からの「夜」の眷属
一方これとは別格に(おそらく別系統の詩人、宗教思想の産物と考えられる)、「夜」はまたいろんな神格を産みだした。
運命の三女神モイライ
その随一は運命の女神たち、モイライで、ヘーシオドス以来三人の老女神として考えられている。
「死」タナトスと「眠り」ヒュプノス
「夜」はまた(死の)定業モロスと、暗い(死の)定めケールと、「死」タナトスとを産んだ。
その他に「夜」の息子としては「眠り」ヒュプノスと、「夢」オネイロスの一族がある。
ヘスペリデス
次に特異なものとして、ヘスペルデスすなわち「黄昏の娘たち」も「夜」の娘とされ、これは名からして想像されるように、西の方、太陽の没する国、オーケアノス(極洋)の涯の園に、黄金の実を結ぶ樹を護って、いつも歌いかつ舞ながらたむろするといわれる、・・・。
ヘーシオドスは夜ニュクスの単性発生説をとる。一般にはプレアデスとともにアトラースとヘスペロスの娘ヘスペリスとの間の娘たちとされる。
ネメシス、ゲーラス、エリス、アーテー
ネメシス「義憤」、ゲーラス「老齢」、エリス「争い」も「夜」の子である。エリスの子でことに、アーテー「迷妄」は、ギリシア倫理思想に著しい役割をつとめ、・・・
ポントス(海)の眷属 ゼウス信者によって怪物にされたフェニキア系
ガイア×ポントス=ネーレウスとケートー
「海」ポントスは大地ガイアとの間に、海の老人と呼ばれるネーレウスを初めとして、・・・・頬の美しいケートー(怪獣、鯨などの巨大な魚族を指す)らの娘を儲けた。
①フェニキア系として怪物の母にされたケートー
②アテーナイ捏造班によって、いいものにされたネーレウスの一族
と二つに分かれる。
ネーレイデス:アンピトリーテーとテティス
中にネーレウスは、優しい正義を愛する老神で、・・・五十人におよぶネーレウスの娘たち、すなわちネーレイデスはいずれも姿貌のよのつねならず優れた乙女で、中にはポセイドーンの妃となったアンピトリーテー、英雄アキレウスの母であるテティス、・・・p33-34
①ネーレイデス:アンピトリーテー
アトランティス帝国の真の女王ポセイドーンの妻メドゥーサの地位を盗んだ格下の泥棒猫。
他のオリュンポスの神々の妻は、そうそうたる女神であるのに、ポセイドーンだけケチなアンピトリーテーはおかしい。
②ネーレイデス:テティス(Θέτις)
アカイア人の野盗ペーレウスの妻になり、アキレウスを生んだとされるケチな神格。
大女神ティーターン族のテーテュース(Τηθύς)と混同しないように、もとネタはこの女神かもしれないが。
怪物の母ケートー
一方ケートーはポリュキュースとの間に、名詮自性、あやしい怪物を生んでいった。
ケートーの娘の女怪:グライアイ、ゴルゴーン、エキドナ
生れた時から白髪であるグライアイ(老女精)、三人のゴルゴーン、・・・
かの上半身は美しい婦人の姿で、下半身は大蛇となり体に斑を有し、地下で生肉を喰らって生きるというエキドナもヘーシオドスはケートーの娘とする。
ポントスの眷属は、海から来たプロト・フェニキア人の別系統の神話であろうが、後の支配階級ゼウス信者によって化け物にされているのがほとんどである。
代表は、
「ケートーとポリュキュース」夫妻の一族である。
三人のグライアイと三人のゴルゴーンを生む。
ゴルゴーンの一人メドゥーサは、古くはアトランティス帝国と、新しくはラケダイモーン王家と深い係わりがある。アテーナイ捏造班によって、ヘーラー同様、悪者の怪物にされたと想定される。
フェニキアの英雄ヘーラクレースやベレロポンテースと関わり深いペーガソスを生むのであるから。
ケートーはあらゆる怪物の母で、怪女エキドナや猛犬ケルベロスやレルネのヒュドラなどの母にされたりしている。
クロノスの反逆とその統治
末の子クロノスばかりは敢然として母の勧めに従い、罪深い父ウーラノスに復仇しようと申し出た。
父ウーラノスの陽物をいきなり切って落とし、うしろのほうに投げ捨てた。
そこから吹き出した血汐は・・・復讐の女神エリーニュースらが生れた。
クレーテーのイーデーの山の洞窟で末子ゼウスを生む
彼は姉妹のレイアーを妻にしていたが、・・・それを懼れて生れるほどの子供を、次々嚥み込んでいった。
レイアーはこれを恨みに思い、次に懐胎したときは用心を重ね、クレーテー島に赴いて、ディクテーの山あるいはイーデーの山の洞窟でゼウスを生み落とした。
三分割(天界・海・冥界)
それからしてゼウスら三人の兄弟は、全世界を配分統治することとしたが(ここに男系家族制が認められる)、籤を振るとゼウスには天界、ポセイドーンには海、プルートーンには冥界が当った。
第二節 ティーターンの一族
クロノスの正体
クロノスとは何者か?
クロノスであるが、・・・おそらくこの神はギリシア民族の南下以前から農業神として崇拝されていたもので、ゼウスとの物語は、新来民族の主神が土着民の宗教を圧迫し、その神々をあるいは急襲、あるいは弱体化した名残とも推定され、その名称も大体ギリシア語起源ではないと見られている。p41
クロニア
しかしかすかながら彼の崇拝の痕跡はアテーナイやロドス島、テーバイに認められる祭式「クロニア」にも覗える。
これは収穫祝いの祭で、主人側は使用人たちの労をねぎらうため、主従の別なくあい共に歓をつくすのを習いとした。p43
収穫の鎌(ハルペー)
クロノスの姿は通例老人で、重々しい様相の憂鬱な表情をし、手に例の鎌とおぼしい曲がった刃物を持っている。p43
ヘーシオドス『仕事と日々』のクロノスの治世
ヘーシオドス『仕事と日々』によると、クロノスが天にあって治めた時世は、いわゆる黄金時代であって、その頃の人間は心にわずらいを知らず、労苦も悲しみもなく、あらゆる災いから遠く離れ、愉しい饗宴に日々を送ったとある。
あらゆる物資はおのずから地に溢れ、播くことも刈ることもいらずに、老いも知らず、ただ齢が満ちたときは自然と眠りに入ったまま死んで行った。
これらの記述から、クロノスとは何者かを想定しよう。
まず、ゼウスの支配以前の最高神である。
しかし、それは武力による支配する神ではなく、農業神であり、文明と豊穣を与えるやさしい神である。
そして「クロニア」という祭礼が示すように、被征服者のための保護神である。
奴隷や被征服民が崇拝していた神であると想定される。
エーリス地方でもヘーラーとゼウスが主神としてやってくる以前は、クロノスの聖域だったらしいことからも、フェニキア系の主神ヘーラーおよびゼウス(バアル)の支配以前の主神であろう。
農耕神ということから、ギリシアが耕作を行なっていた乾燥する以前の時代の神格なのかもしれない。
「クロノスの治世」についての言及が、ボイオーティア地方出身のヘーシオドスに典拠することを考えると、クロノスもフェニキア系と関係の深い神であったとも想定される。
いちばん無難な想定は、アテーナイ、ロドス、エーリス、ボイオーティアという領域から、エジプトからクレタ島経由に北上移住したヘリオポリス信者によって駆逐された「星辰信仰」のシュメル人の末裔ということであろう。灌漑をはじめて導入したのは、残虐なアピスや傲慢なアムピーオーンとゼートスに投影されるエジプト人ではなく、平和的なシュメル人だったのかもしれない。それがクロノス信者であったと想定できる。
クロノス、オーリーオーンなどの信者と想定される。
シュメル人がフェニキア人の核であるとするならば、クロノスの領域が、ガディル(ガデス)に投影された楽園であることも納得がいく。また「クロノスの治世」が、ディオドロス・シケリオテスのガデスをモデルにしたと思しき「楽園」にそっくりなこともそれを支持する傍証となろう。
したがって、フェニキア人の核たるエジプトからの追放シュメル人の崇拝した神であるが、もとは原ギリシア人の崇拝した神だったのかもしれない。
そのあと、フェニキア人の導入した主神ポセイドーンにその地位を奪われ、ポセイドーンもゼウスにその地位を奪われるわけであるから。
オーケアノスとオーケアニデス(オーケアノスの眷属)
オーケアノスはまたテーテュースを妻として多くの子を持っていた。
まず息子としてはその数三千にあまる河々の神である。
オーケアニデス(オーケアノスの娘たち)があり、その数は三千、つまり無数であって世のあらゆる泉井はこれに属し、・・・p42-43
さらに特異な性格を持つオーケアニデスの一人はステュクス(「憎悪」の河)で、地下黄泉の河水として神々の間にも絶対的な権威をもち、ゼウスをはじめ諸々の神々がかしこい誓言を誓うものとされた。p43
オーケアノスの眷属は、あらゆる土着の河神、泉井の化身とされている。
これはオーケアノスの土着性を示している。
それとは別に、オーケアノスは、ギリシア世界の外海、還洋のイメージがある。
これはプロト・フェニキア人の導入した神を投影している。
つまり、原ギリシア人とプロト・フェニキア人の両方の起源を感じる。
主要なオーケアニデスについては、後に論じるが、これは神々の母である。
ヒュペリオーンの子三人(へーリオスの眷属)
次にヒュペリオーン、すなわち「高きを行く者」は、息子とされるヘーリオスとしばしば同一視される、おそらく古い太陽神の形容詞でもあったのだろう。
系譜では姉妹のティアーと結婚して、ヘーリオスおよび月の女神セレーネー、曙の女神エーオースの三神を儲けた。p44
オリュンポスの神々が来る以前の神々で、
ヒュペルオーン=ヘーリオスは、太陽神で、アポローンに乗っ取られた神格である。
セレネーは月の女神で、アルテミスに乗っ取られる。
エーオースの子孫もティーターンとして征伐される。
これらは高い可能性で原ギリシア人の崇拝していた神であろう。
コリントスでヘーリオス信者(原ギリシア人)とポセイドーン信者(プロト・フェニキア人)が、わずかな摩擦もあるが、おおむね仲良く共存している。
また原ギリシア人が第一次テッサリア人とするなら、第二次テッサリア人であるアイオロス王家の英雄エンデュミオーンが、エーリスデ、セレネー信者と共存して君臨したことは、原ギリシア人の神であったことの傍証となる。
クリーオス(クレイオス)の眷属
クリーオスあるいはクレイオスは、「海」ポントスの娘エウリュビアー(「広く生きる」または「広い力」)を娶り、間にアストライオス(星座)、パラース(憎悪の河ステュクスの夫となる)、およびペルセースの三人の息子を儲けた。
アストライオスは明星ポースポロスその他の星々を生したという。
ペルセースは、コイオスの娘アステリアーを妻とし、恐ろしい女神ヘカテーを儲けた。p44
クリーオス=クレイオス:Κρεῖοςは「天の牡羊」とされる。
つまりクリーオス(κριός)またはクレイオス(kρεῖος)は牡羊という意味である。
遊牧・牧畜と関係の深い神だったと思われる。
原ギリシア人と関連が想定され、土着の神であっただろう。
つまり「天の牡羊」というへんてこな名の土着の神に、外来の文明神が「接ぎ木」されたとみる。
アテーナイ捏造班によって、アストライオス、ペルセース、パラースの父として捏造もしくは「接ぎ木」されたのであろう。
アストライオス(星座)は風神・星神の父。こちらは神として実在性があり、この捏造神に「接ぎ木」されたもよう。ギリシアに逃げて来て灌漑を伝えた星辰信仰のシュメル人(フェニキア人の核)の崇拝していた神であることは間違いない。
アストライオス(星座)、デーロス島の祖アステリアー、クレタ島の祖王アステリオス、そしてオーリーオーンは、星辰信者の崇拝していた神々であると想定される。
ペルセースは捏造神である。アステリアーを妻としヘカテーをもうけたことにしている。
アステリアーとヘカテーは実在の神。この捏造神に「接ぎ木」された。
ペルセースの実体は、捏造神ペルセウスの子でペルシア人の先祖として捏造された捏造神であり、
アテーナイ捏造班の作品で、ヘーリオスとペルセーイス(こちらも捏造女神)の間の子とされ、
兄弟姉妹に、コルキス王アイエーテース、魔女キルケー、ミーノースの妻パーシパエーがいる。
これらは、捏造接ぎ木でアテーナイ捏造班側の神である。
アイエーテースの娘がメデイアで、メディア帝国から捏造された。
イアーペトスの三人の子ども(アトラースとプロメーテウス兄弟)
イアーペトスとは何者か?
イアーペトスは、オーケアニデスのアシアーあるいはクリュメネー、一説では姉妹に当るテミスを妻とし、間に、
アトラース、プロメーテウス、エピメーテウスなどを儲けた。p44
オーケアノスの娘オーケアニデスと、マイナー神格イアーペトスの間の子どもが、
一大眷属を率いるアトラースと、奴隷の保護者で人類の祖であるプロメーテウス兄弟である。
このイアーペトス( Ἰάπετος)であるが、語源は何か?外来の語源とされ不明である。
石(πέτρα)から来ており、子どもは北方出身コルキス地方領域とするアイオリス人の祖先であるから、巨石加工する肉体労働者の投影か。巨人族に投影された。
アポローン・イスメニオスの神域のイスメノス川の語源が、smnセム語の湿地であることからも、イスメノスの語源が、エシュムン(シドンの主神・アスクレーピオスに投影された癒しの神)であることからも、こっちは石ではないかと思うのだが、ままいいだろう。
それとも、プタハPtahと関係があるのか。プタハは、頭ぴったりヘルメットをかぶる冶金の神であり、あきらかに、その姿は、小柄でこのヘルメットをかぶっているシュメル人のブレーンの
第三王朝ジェセルの宰相イムホテプ、第四王朝クフの宰相ヘムオンと同じである。
第一王朝のナルメルにも、シュメル人のブレーンがついていて、それが、プタハ神に投影されたと思われる。このシュメル人あらためフェニキア人の冶金・建築ブレーン集団は、第19王朝でもブレーンをつとめ、アブシンベル神殿のプタハ像にだけ年を通して日が当たらない。
こっちではなくて、巨人のほうであろう。
アトラース
アトラースは、コーカサスとリビュアの両方にあるが、おそらく大元はリビュアであり、コーカサスは捏造された分身であろう。
プロト・フェニキア人であったアトラースを、プロメーテウスとエピメーテウスの兄弟(原ギリシア人)に「接ぎ木」したと想定される。
アトラースとプレイオネーの娘プレアデス(アトラースの7人娘)
アトラースとプレイオネーの原郷・アトランティス
アトラースの娘はかの七つ星、すなわち「すばる」昴星プレアデスまたはペレイアデスで、
オーケアノスの娘プレイオネーとの間に生まれた。
アルキュオネー、メロペー、ケライノー、エーレクトラー、ステロペー、ターユゲテー、およびマイアの七人である。p46
アトラース自身が、リビュア出身のプロト・フェニキア人の投影であろう。
妻のプレイオネーは、「航海する」から来ており、オーケアノスの娘ということからも、こちらもリビュア出身のプロト・フェニキア人の投影であろう。
オーケアノスの娘プレイオネーとの間に生まれた昴(プレアデス)もそうであろう。
この一家は、故郷をアトランティスの領域にもつプロト・フェニキア人で、星辰信仰の人々である。
つまりシュメル人の星辰信仰の信者が、リュビアに逃げて、そこに領域を展開したのが、アトランティス帝国の淵源であろう。この住民に、北方からジブラルテルを渡って流入した原ケルト人と混血し、長身で美しい肉体と、鋭い知性と文明力をそなえたアトランティス人が誕生したとみる。
後にカルタゴ人やベルベル人に流入していく血である。
昴(プレアデス)のうちの最上級の三人娘
この七人の娘は、マイアがゼウスによって伝令神ヘルメースの母となったほか、
ターユゲテーもゼウスによってラケダイモーンを産んだ。
エーレクトラーはゼウスに愛せられて、トロイア王家の祖ダルダノスを産んだ。
マイアは、最高で、プロト・フェニキア人の神ヘルメースの母になり、
ターユゲテーは、ラケダイモーン王家の祖になり、
エーレクトラーは、トロイア王家の祖になる。
つまり、ヘルメースとラケダイモーン王家、トロイア王家の祖は、プロト・フェニキア人である。
プロト・フェニキア人
これをもって、オーケアノスおよびその子アトラースとプロメーテウス兄弟の生誕の地は、オーケアノスの彼方、「アトランティス」であると想定できる。
アトランティスとは、アトランティック・オーシャン(大西洋)の語源であり、ジブラルタル海峡を含む西地中海の領域を指すと措定しておこう。
プロメーテウスは、肉体的には、アイオロス王家の祖であるが、その高度な知恵は、フェニキア人のものである。またシュメルの神エンキが遠くは投影されていることはその傍証となる。
彼らクロノスをはじめとするティーターン族の故郷こそ、この「アトランティス」であると措定し、太古に、この「アトランティス」の領域に居住し、農耕を能くしていた民族を「プロト・フェニキア人」と措定する。
この民族は、フェニキア人の一番最初の植民活動で、文明英雄として現われた人々の子孫とする。
フェニキア人の植民化活動の最終形態である「カルタゴ人」の祖型をなす人々、
つまりフェニキアの故地から植民活動に出て、リビアの北岸からジブラルタル海峡を挟んでイベリア半島の南岸まで、ガデス(ガディール島)とトルナクリア(三角島)=シケリア島、などを領域として領域展開していた民族とする。
エーオース(暁の女神)の眷属
暁の女神(エーオース)はポントスの孫アストライオスとの間に風と星とを産んだ、といわれる。p56
四柱の風神
その風神はふつう四柱で、北風ボレアース、東風エウロス、南風ノトス、西風ゼピュロスと呼ばれ、p56
北風は最も勢いのはげしい、荒々しい風で、航海に頼るギリシア人にほもっとも恐れられていた。秋の末から春の初めまでは北の風が吹きすさみ、もっとも海難事故の多い時期であった。
その反対に優しいのはゼピュロスで、春の季節の風である。p57
風と星の神格は、いかもにフェニキア人らしい。
フェニキア人は、自然物や人工物(港など)も神格を与えるが、フェニキア人の汎神論的傾向性の表れである。アステライオスとの間に星を生んだというのも、北極星を指標に航海していたフェニキア人らしい。
アストライオス(星座)は風神・星神の父。こちらは神として実在性があり、この捏造神に「接ぎ木」されたもよう。ギリシアに逃げて来て灌漑を伝えた星辰信仰のシュメル人(フェニキア人の核)の崇拝していた神であることは間違いない。
アストライオス(星座)、デーロス島の祖アステリアー、クレタ島の祖王アステリオス、そしてオーリーオーンは、星辰信者の崇拝していた神々であると想定される。
第三節 プロメーテウスと人間の始まり
人類創造説は新説
人類の起源と地生人
プロメーテウスが創造説
『ギリシア巡遊記』の作者パウサニアース(二世紀後半の文人)は、ポーキス州の項に、次のような興味ある記事を掲げている。
「ボイオーティアの一市カイロネアから四キロほどのところにパノペウスという町があって、・・・
むかしプロメーテウスが人間をはじめて作ったその土地の残りが、まさにこの土塊なのだということである。」p57-58
つまりプロメーテウスというティーターン(被征服民の神)が、ポーキス地方のパノペウスで、土塊から、粘土をこねるように、こしらえたというのである。
これはまさにヘブライ神話のヤハウェが造るような感じだ。
ギリシア神話に人類起源の定説なし
古代ギリシア人が空想した人類の起源はもとより一様ではない(したがってギリシア神話に、人類の起源についての定説があると思うのは大きな誤ちである)p58
もちろん、合理的な呉茂一先生は、そんな粘土工作説など信じない。
イソップはゼウス創造説もプロメーテウス創造説も
現に「イソップの物語」にも、ゼウスが人類をくつったとき、というのと、プロメーテウスが人間をつくった、というのと両説が出ている。p58
創造説は新説(こどもだましの)
しかし、これらの創造説もしくは形成説は比較的新しいらしくて、p58
自然発生説=地生説(ゲーゲネス説)
ヘーシオドスは男性は自然発生説、女性は神の創造説
ヘーシオドスでも大体人類はすでに自ら存在していたらしく、ただ婦人を、人類に災いを与えるために、ゼウスが諸神に命じて作らせたということが挙っているだけである。p58
神が創造したというようなプリミティブな子どもだましは、後世の権力者の捏造話でしかないだろう。
フェニキア人(ダゴンの末裔)は、地生説(ゲーゲネス説)を採用している。
最古は「地生」ゲーゲネス説(フェニキアのピローンの説)
一般に一番古い伝統的な考え方としては人類は自然に大地から生じたものだというので、この「地生」ゲーゲネスということはしばしば一つの誇りとしてさえ語り合わされた。p58-59
ボイオーティア生まれの詩人たちの「地生説」
それで詩人ヘーシオドスもピンダロスも、人類はもともと神々と同じく母なる大地から生れた、同族であり、同じ生命を分かつものだ、と歌っている。p59
カドモス一統の根拠地ボイオーティア地方では、フェニキア系の人類発祥説である「地生説」が根付いていた。
ボイオーティア出身の詩人ヘーシオドスとピンダロスが、それを採用しているのが傍証である。
大地から生れた者と神々の結婚から生れた氏族
また伝説にも、あるいは各地方の開祖、あるいは都や氏族の設立者が、たとえばアッティケーのケクロプスやアルカディアのペラスゴス、コース島のメロプスのように、多くは大地から生れた者として伝えられ、多くの氏族はこのような人々の娘、あるいは河神の娘と天上の神々やその子孫との結婚からして、生れた息子を彼らの祖先に持っていた。p59
各地の王家は、「生え抜き」とプロト・フェニキア人の結合から生れ、テーバイ帝室やアイオリス王家が混血していく。
人間の五世代
ヘーシオドス「地生説(ゲーゲネス説)」「創造説」両方受け入れ
人類の太古を述べた伝説のうちで最も有名なのは、先にふれた「五世代」の説で、ヘーシオドスの『仕事と日々』の記述によると、人間をつくったのは、オリュンポスの神々ということになっている。p59
つまり、ヘーシオドスは、フェニキア系の最古の「地生説」と新しい「創造説」両方を受け入れている。
「地生説(ゲーゲネス説)」はフェニキア系、「創造説」はメソポタミア系である。
神々がひまぶっこぐために奴隷として人間を創造したというのがその趣旨である。
ヘーシオドスの「五代説」(ヘーシオドスの神の創造説)の概要
黄金の種族
「オリュンポスに宮しきいます神々は、まず初めに人間の黄金の種族を作り出した。それはかのクロノスが大空に王となって治めていた時世のことであった。p59
クロノスが王ならオリュンポスの神々は胃の中か洞窟ですっこんでいるはずだ!
これはおかしい矛盾である。
まあ、クロノスの治世に生きた人類は、未来からタイムスリップしてきたオリュンポスの神々が造ったのではなく、地生で生まれてきていたというのが合理的であろう。
そしてこの種族は、「大地が埋めかくしてしまうと」というように、生まれ故郷の大地に帰ったのである。
これからも劣等なオリュンポスの神々の創造ではありえない。
白銀の種族は万年幼児の蝉人間
今度は白銀の種族を、百年間も子供のままで、・・・十分年頃になりきると、今度はほんのわずかの間しか生命をたもてないのであった。
不死の神々に仕えようとせず、・・・ゼウスは滅ぼされた。オリュンポスを保ちたもう幸う神々を崇めようともしないからである。p60
オリュンポスの神々は、黄金族のアップデイト型の人類を造れそうなものであるが、なんと劣化した白銀族をこしらえた!
それはおそるべき「蝉人間」であった!
百年間も幼児のままで、大人になったらすぐに死んだ。
そしてオリュンポスでどんちゃん騒ぎするしか能のない劣悪なオリュンポスの神に対する「涜神」の罪により滅ぼされた。
この「蝉人間」は、後世の支配者がけなしているだけで、ほんとうは青銅人間や鉄人間より高級なのである。
黄金人間は、農耕人の投影であろう。
ギリシア本土にプロト・カルタゴ人が上陸して、灌漑を行ない穀物を生産したが、気候変動とともにギリシアが乾燥の大地になった。
自然と農耕も廃れ「黄金人」もいなくなった。
やってきたのは航海民族のフェニキア系の第二派であるカドモス一統。
銀の貨幣を利用して、乾燥地にあった葡萄やオリーブ栽培を導入する傍ら、商業交易にいそしんだ。それを嫉妬からひまぶっこいでいると映ったのだろう。
蝉とは幸福と富裕のシンボルである。
イオニア人も蝉の髪留めを着けていて、それは富裕の象徴であった。
またフランスのプロヴァンス地方では、蝉は幸福のシンボルである。
なぜかって、地中で長年下準備をして、地上に出ると、短い生涯をあらんかぎりの勤勉で鳴きとおしているのだから。
青銅の種族
青銅の種族・・・それ白銀の種族とはさらに似ていず、とねりこの木から出たもので、軍神アレースのわざを心がけ、非道にふけった。p61
英雄ヘーロースの種族
英雄ヘーロースたちの神々しい種族で、半神と呼ばれる。
この英雄の種族はいかにもいびつである。
英雄の種族の時代は、みんな英雄ばかりだったのか?とつっこみたくなる。
つまり、この「英雄の種族」を考え出した連中は、英雄を捏造した連中であろう。
英雄は、投影と捏造で作られていると想定される。
ヘーラクレースは、テーバイ帝室の代々の帝王を投影した英雄であろう。
それに対して、ペルセウス、テーセウス、アキレウスは、ダナオイ人とアカイア人の子孫の当時のアテーナイの権力者たち(アルクメオン家とアイアコス家の人々)が、捏造したものであろう。
つまり、青銅の種族に、英雄たちと平民がいたのであろう。
これは、前1800年から前1200年の「前一二〇〇年のカタストロフ」以前の時代の後期、二大陣営の血みどろの戦国時代を投影しているのだろう。
現代は鉄の種族
なぜなら今こそこれら鉄の種族の世なのである。p62
「前一二〇〇年のカタストロフ」以降、鉄器が発明されて以後が、鉄の種族である。
プロメーテウスの劫罰
メーコーネー(シキュオーン)での祭儀争い
その発端は『神系譜』によると、メーコーネー(ペロポンネーソス半島東北隅の小市ソキュオーンの古名)で、人間と神々とが、祭儀のことで、争いをもった時にあった。p64
人間の味方をして神をあざむく
その判者の役をプロメーテウスが買って出て、進んで大きな牛を屠ると、それを切り剖いて、神々に献ずる分と、人間が受ける分とに分けた。
その際、プロメーテウスは、肉のところと栄養の多い臓物とは牛の皮の中に容れてその上に胃袋を置いたが、一方白い骨はつやつやしい脂肉で十分にくるみ、いかにも美味らしく見せかけ、この二つに分けたのをゼウスの前に置いた。そして、どちらでも好いほうを取るよう、ゼウスに勧めた。
腿の骨を献ずる作法確立
それから以後、オリュンポスの神々にはもっぱら腿の骨を脂肉でくるんで、焼いて献ずる習わしになったのだ、という。
これは、祭儀の起源を説明する神話であろう。
神々の罰
搾取のために人間を楽させない神々
そこで大神は、人間どもから平安な生計の道を隠しておかれることにしたもうた。さもないと人間は楽々と一日のうちに、あと一年を働かずに十分暮らせるほどの仕事をしてしまい、怠けることになるだろう、・・・
火を禁じたので人間は病気になっていった
あまつさえ、ゼウスは「疲れを知らない」火の勢いを、死すべき人間どもに与えるのを拒んだ。そこで人間は夜も闇の中に、野獣を恐れおののいて過ごし、物を煮て食べることも焼くことも知らないで病気になっていった。
文化英雄プロメーテウス
神々、プロメーテウス、人間の関係
人間の造り手として、あるいは先祖として(後にいうごとく)、あるいはともかく非常な同情者として、プロメーテウスはこれを黙って見過ごすことができなかった。
プロメーテウスは、ティーターン族であり、文化英雄であるから、プロト・フェニキア人の投影であろう。
プロメーテウスが火を運んだものは茴香!
天上の火を盗み出す工夫をこらし、大茴香(地中海地方に多い沼沢地の雑草で、その茎が、灯心草のように乾かすと燃えやすい火口になる)のうつろな茎を持って、天に登っていった。
それ以来人間は火を獲て、これをさまざまに用いる術をも教わり、遣るも安らかに眠りうるようになった。p
フェニキア地方のウガリットに自生している茴香に入れて火を盗んだのは意味深長である。
プロメーテウスの出自
プロメーテウスが人類に施した恩恵はこれにとどまらず、家を建てること、気候を観測すること、数を数えること、文字を書くこと、野獣を飼い慣らすこと、船を作って海を渡ることなど、すべてみな彼が人間に教え授けたものであった。要するに彼は、いわば人類の文化の精神、知性の表徴というべきであろう。p66
すべてフェニキア人が教えたものである。
文字は、第二派のカドモス一統が伝えたものであろう。
要は、プロメーテウスはフェニキア系の投影であろう。
コーカサスに磔
それでゼウスはついに決意を固め、「権力」クラトスと「暴力」ビアーの二神に命じて、「知性」プロメーテウスを引き立て、これをスキュティアともカウカソスの高山の峰ともいわれる巨岩に磔させた。
プロメーテウスは、「アトランティス」の領域から来たプロト・フェニキア人であろう。
後にヘーラクレースによって解放されたり、ヘーラクレースに助言したり、カドモス一統とは親族関係にある。
第四節 女の創造と大洪水
女は男を苦しめるために作られた(男尊女卑)
私は火の償いとして、災いを遣る、・・・
ヘーパイストス神に、粘土を水で捏ねて人形をつくり、それに人間の声と力を打ち込ませた。
アイオリス系は男尊女卑だったのだろう。
男女同権はフェニキア系。
フェニキア系では、男女とも地生人だが、アイオリス系は創造説をとっており、女性はあとから造られたことになっている。
プロメーテウスの解放
アイスキュロスの三部作の一つ『解き放たれたプロメーテウス』・・・
ヘーラクレースが、西の方ヘスペリデスの黄金の果実を取りにゆく途中でスキュティアを通りプロメーテウスを認め、例弓矢で肝臓を啄みに来た鷲を射て取り、その縛めを解いて彼を自由にしてやる。
西へ行く途中で、スキュティアを通ることは矛盾でしかない。
これはアトランティスの領域=コーカサス地方(スキュティア地方)という古典期のギリシア人のとんでも地理学の影響である。
デウカリオーンの大洪水
プロメーテウスはデウカリオーンの父(人類の祖)
プロメーテウスは人間を造ったとも言われたが一方はまたデウカリオーンの父として、人類の祖先にも当っている。
デウカリオーンの妻ピュラーはエピメーテウスとパンドーラーの娘
デウカリオーンは、ギリシア人の先祖としてテッサリア地方を統治し、エピメーテウスとパンドーラーとの娘ピュラーを娶ったというのが通説のようで、・・・
プロメーテウスの助言
デウカリオーンとピュラーだけは、あらかじめこのことを父プロメーテウスから教わっていたので、一つの箱船を造り、それに食糧やその他入用の品をできるだけ制限して積みこんでおいた。
アララト山はパルナッソス山
船は南へと押し流され、ポーキスとボイオーティアとが接する堺に近く、パルナッソスの二つの峰が、高く聳えるところに止まった。
この「洪水伝説」の元ネタは、メソポタミア文明の開祖シュメル人の「洪水伝説」である。
シュメルの洪水伝説では、デウカリオーンに当るのが、ジウスドゥラ、プロメーテウスに当るのが慈悲深いエンキ神である。
言わずと知れた「ノアの洪水伝説」の元ネタでもあり、「ギルガメシュ叙事詩」などの元ネタでもある。
洪水後の世界
後にアポローンが奪う託宣所の主テミス
天候が回復したのを見てデウカリオーンは船から降り、・・・テミスにも厚い感謝の祈りをした。
テミス(プロメーテウスの母ともいう)は、このパルナッソスの南麓にあるデルポイに、古くから託宣の場所をもつ神であった。
アポローンが簒奪した託宣所は、テミスもしくはピュトンの託宣所であったらしい。
まだアポローンたちが来る前の時代である。
テミスとは、ティーターン族のクロノスの兄でありプロメーテウスの父イーアペトスの姉妹である。
つまり、プロメーテウスの母は、オーケアニデスのアシアーなどかティーターン族のテミスかなど諸説ある。
デウカリオーンとピュラーの長男ヘレーン
デウカリオーンはピュラーとの間に、何人かの子を儲けた、
ギリシア人たちの祖先であるへレーンはその長男だという。
ギリシア人のことをヘレーネスというのは彼の子孫だからである(しかしもちろん本当は逆で、彼はヘレーネスの祖先として儲けられた人物、いわゆる「名付けの英雄」であろう)
ティーターンの父と母(テミス)の間の子プロメーテウスの一族は、ティーターン族である。
つまりアイオリス系が南下してくる以前の「生え抜き」×プロト・フェニキア人の先住民を投影していると思われる。
そしてギリシア人の祖ヘレーンは、アイオロス王家の祖である。
ヘレーネスとは狭義では、アイオロス王家の謂いと措定しておく。
これは、アイオロス王家の一分枝ピュロスからの帰化人であったペイシストラトス一統が、オリュンポス12神を全ヘレーネスのパンテオンとして構築した時代に、
すなわち、トゥキュディデスのいうところのヒッピアスの子ペイシストラトス(名僭主ペイシストラトスの同名の孫)が父と共同統治していた時代に、つくられた概念の可能性がある。
それまで、別々の都市国家が、それぞれの固有の都市神を崇拝していた。
一方ギリシア人という総称は、カドモス一統のテーバイ帝室が、西地中海に植民した過程で、ボイオーティア地方のグライアから取られた名称である。
世界からみたギリシア人の総称がギリシアであるといえる。
ヘレーネスは「日本人」、ギリシア人は「ジャパニーズ」といった感じである。
アイオロス王家は、プロメーテウスをいじめていたオリュンポスの神々のうち、後発のアポローンやアルテミスを導入した一族であっただろう。
南下したアイオリス人は、先住民の先祖プロメーテウスに、自分たちの王族を「接ぎ木」したのである。
ヘレーンの子孫にアンピクテュオーン王が生れた?!
それからアテーナイの初代の頃の王アンピクテュオーンが生れた、というが、これも大地の子との説もある、そのほうがむしろ本当であろう。つまり土着民の部落の長という意味だから。
アムピトリュオーン王が、アイオリス系か?
これに対して呉先生は、疑義を呈しておられるが、私は是とする。
アムピトリュオーン王は、一時アテーナイに南下して支配し、撃退され出戻ったアイオリス系の王と見る。
この王の時、デーメーテールのアムピクテュオネス(隣保同盟)を制圧し、テミスとピュトンの託宣所を制圧したアイオリス王家は、デルポイをテミスーピュトンの託宣所からアポローンの託宣所に変えたのであろう。
ドーリス・イオーニア・アイオリス族の祖!?
一方ヘレーンはニンフとの間に、ドーロス、クスートス、アイオロスの三人を儲けた。
それぞれドーリス族、イオーニア族、アイオリス族の祖と呼ばれる。
これこそ「接ぎ木」捏造の最たるものである。
おそらくアイオリス王家の末裔であるペイシストラトス一統が、アテーナイで捏造した神話であろう。
ドーリス系とイオーニア系は大部分が、フェニキア系である。
イオーニア人は、エーゲ海の島嶼と小アジアの西岸のギリシア系都市国家の住民を指すが、カドモスがギリシア本土に侵入した行きの経路で植民した子孫、テーバイからギリシア本土を制圧した後、里帰り植民した子孫である。
その一部が、ギリシア本土の「トロイア戦争」の「レコンキスタ」の中で、アカイア人テーセウスの子どもたちを駆逐したピュロスからアテーナイを制圧したアイオリス系の王族が、そのままアテーナイの王となり、その一分枝であるコドロスが率いて植民した人々である。
イオーニア族とアカイオイ族を同祖にまとめた動機
ヘレーンはのち三人の子に所領を分けたが、そのうちクスートスはペロポンネソス半島を分配され、二人の子イオーンとアカイオスによって、されにイオーニア族とアカイオイ族との祖になった。
アイオリス人をイオーニア人(ほとんどフェニキア系)とアカイア人の先祖にしてしまう厚かましさであるが、これもペイシストラトス一統が力を持っていた証拠であろう。
ペイシストラトス一統は、ヘレーネスが互いに争うのをやめさせようとパン・ヘレーネスのパンテオンを構築し、先祖もひとつにまとめたのである。
捏造はいただけないが、その動機は、共闘しているフェニキア系の標ぼうする「友愛」であった。
アテーナイ人(ダナオイ人+アカイア人)の搾取のための帝国主義とは真逆の動機であるから、評価できる。
第五節 巨人族ギガンテスとの戦い
ギガンテスとギガントマキアー(第二世代の巨人族)
大地ガイアは自分の生んだティーターンらが地底に幽閉されたのに心安からず、なおも多くの巨人たちを産み出してゼウス兄弟の主権を脅かそうとした。
・・・・一般に包括してギガンテスと呼ばれる。
その姿は、・・・脚は大蛇のように鱗に蔽われていた。
ティーターン族は、人間形で、むしろオリュンポスの神々の親世代であるが、
ギガンテスは、あんよが蛇という特徴からも、怪物じみている。
これがゼウス一統の第二の試練となった「巨人(との)戦」ギガントマキアーである。
しかしその後も大地の怒りはやまず、今度はタルタロスと交わってテュポーニウス(テューポーンともテューポースともいう、台風は彼がおこす暴風の名である)を末子に生んだ。
第二世代の巨人族は、自然災害の投影のようであり、その最大の敵はテュポーンであるが、台風の投影であろう。
巨人第三世代は人間 アローアダイ
第三に生れた巨人の族は、今までのと変って神族ではなく、人間の子であった。p86
アイオロスの娘の孫
それはアイオロスの娘、カナケーの子、アローエウスの息子らに当っていた。
なんとオリュンポスの神々を導入したのは、アイオリス人であるが、この第三世代の巨人族は、そのアイオロス王家の王女カナケーとポセイドーン(プロト・フェニキア人の崇拝神)との子孫である。
アローアダイ
カナケーはポセイドーンと契ってアローエウスを産んだというが、彼の妻イーピメディアもポセイドーンを愛し、・・・二人の子を生んだ。
すなわちアローアダイ(アローエウスの裔)と呼ばれるオートスとエピアルテース(同名の巨人が前にもあった、おそらく言い伝えの混乱または別伝であろう)で赤児のときからすばらしい成長のしかたで、一年ごとに一尋(約ニメートル)ずつ背が延びた。
アローアダイの子オートスとエピアルテースは、プロト・フェニキア人の豪族(ポセイドーン)とアイオロス王家の王女カナケーの子孫の投影であろう。
アレースの甕捕縛
また軍神アレースを敗かして縛りあげ、青銅の甕の中に十三ヵ月間閉じ込めたという。p87
アレースとは何か?
アイオロス王家が制圧する過程で、地元の豪族との確執があったようである。
アローアダイは、プロト・フェニキア人とアイオロス王家のハイブリッドで、彼らは、生粋のアイオロス王家によって制圧されたと考えられる。
もっとも一概にアレースは、プロト・フェニキア人と想定される。
ヘルメースに救出されていることからもプロト・フェニキア人の神であろう。
プロト・フェニキア人がアプロディーテーと夫婦神格でギリシア本土に導入した神である可能性が高いからだ。
カドモス一統が侵入してくると、ハルモニアーとカドモスの「聖婚」(ヘーラーとゼウスの「聖婚」は、この婚礼の投影かもしれない)によって、テーバイ帝室の軍神となって以来、ラケダイモーン王家の軍神まで継承される。
(もっともテーバイでは、ヘーラクレースを軍神としていたため、カドモスの舅どのは暇をぶっこいでいたが、ラケダイモーンに来ると、夫婦で上陸した侵入経路の故地のためか、大いに愛された。)
イーピメデイアは「力強く統治する女性」という大地女神
しかし古伝では、彼らは大地の子と呼ばれており、その母といわれるイーピメデイアは実は大地女神の別号(力強く統治する女性)であろうかと推察される。
カーリア地方の神々
それゆえこのアローアダイは「大地の子たち」の古い別号(ギリシア語、たぶん外来語、のaloeは、段畠、平地)で、ギリシア人の移住前に小アジア西部地方(たとえばカーリアのミュラサではイーピメデイアを祭る)で崇拝されていた神々の名残りかも知れない。
アローアダイの父アローエウスは、このポセイドーンの子の説ととも異説で、ヘーリオスの子というのがある。
『パウサニアス』第二巻三章10節によれば、エウメーロスからの引用として、
太陽神ヘーリオスは、二人の息子アローエウスとアイエーテースがおり、
アローエウスには、アソーピア(後のシキュオン)の土地を、
アイエーテースには、エピュライア(後のコリントス)の土地を与えた。
後に、アローエウスの子エポペウスがアソーピアとエピュライアの両方の土地を支配した。
のちエポペウスの子のマラトンは子なしで死ぬと、なんとコリントスの人々は、イオールコスからメーデイアを招聘したという。
このメーデイアを仲介に、イアーソンをコリントス王に招聘したという。
後に、メーディアとイアーソンが不仲になり、イアーソンがイオールコスに帰国し、メーデイアも支配権をシーシュポスに譲って小アジアへ去ったという。
これからもイーピメデイア=メーデイアで、小アジアの大地母神であり、
その婿アローエウスと子どもたちアローアダイは、アソーピア(シキュオン)・エピュライア(コリントス)地方の先住民の豪族であったのだろう。
それがアイオリス王家(イアーソン、シーシュポス)によって制圧されたことの投影であろう。


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