著述 本26 中山茂『西洋占星術史』

ギリシア
  1. 1 カルデアの知恵
      1. 占星術師の源流は、バビロニア文化
  2. 2 ギリシャ人の科学
      1. ホロスコープ
      2. ホロスコープの登場は前二世紀のヒッパルコス以後
      3. 体系的著書『アルマゲスト』、『テトラビブロス』
      4. バビロニアの観測データ、天文常数を最初に使用/ヒッパルコス
      5. プトレマイオスの「天動説天文学」のパラダイム
      6. パラダイムとは?
      7. プトレマイオスの天文学の大著『アルマゲスト』
  3. 『テトラビブロス』
      1. プトレマイオスの占星術の大著『テトラビブロス』
      2. 『テトラビブロス』=四つの書
      3. 第一書
      4. 天:エーテル(アイテール)、地:火風水土の四元素/アリストテレスの宇宙観!!
      5. 天体の影響の順序
      6. 太陽:光と熱で影響、月:地上の潮汐現象で影響
      7. アリストテレスの宇宙論(アイテールと火風水土の五元素論)
      8. 玉ねぎ型の地球中心宇宙論=天動説
      9. 太陽:「乾・熱」
      10. 月:「湿・熱」
      11. 土星:「乾・冷」
      12. 火星:「乾・熱」
      13. 木星:「湿・熱」
      14. 金星:「湿・熱」
      15. 水星:「乾・湿・冷・熱」
      16. 「湿・熱」=善、「乾・冷」=悪
      17. 善星=「木星・金星・月」、悪星=「火星・土星」、両義的星=「太陽・水星」
      18. 女性=「月・金星」、男性=「太陽・火星・木星・土星」、両性具有=「水星」
      19. 第二書:自然占星術・天変占星術
      20. 第二書:国や市のテーマ=君主と家族→今日の気象的なテーマ
      21. 第三書:遺伝的・先天的な事柄、第四書:人為的・後天的な事柄
      22. その人の生誕時のその星のヘリアカルライジングによって占う
      23. アリストテレス自然論(誤謬)で、バビロニアの占星術師データを解釈=理論破綻
      24. 死は計算可能か?/寿命の計算の仕方をながながと
      25. 死因の占い/出生時の西の空に沈みゆく星で占う
  4. 3 ホロスコープの技術
      1. ホロスコープの定義
  5. ホロスコープのつくり方、その原理
      1. ホロスコープのつくり方
      2. 黄道一二宮=獣帯
      3. ホロスコープづくりのイロハのイ:黄道一二宮上に太陽の位置をあらわすこと
      4. 太陽の観測方法
      5. 黄道を描き、12の宮に分割
      6. 度数
      7. 春分の星座=牡羊座を起点に性を割り当て
      8. ピュタゴラス学派の術数で、奇数=男性、偶数=女性
      9. 七曜と一二宮の対応のいいかげんさ
      10. アスペクトのいいかげんさ
      11. 「ハウス=位」の概念の整備/ローマ時代
      12. 12の占うアイテムを占える場所
      13. 一二位は内円:反時計回り、黄道一二宮は外円:時計回り
  6. 占星術の中国伝播の諸相
      1. 一二と七/割り切れないへんな数「七」、中国は十進法
      2. 「七」=ユダヤ・キリスト教の「ウィーク」の数
      3. 「七」=七惑星の数
      4. 「七曜」/バビロニア起源がインド経由で、『宿曜経』の翻訳で中国へ/8世紀
      5. ユダヤ・ヘブライ文化の「週のシステム」/西域経由で中国へ
      6. 五行=木火土金水から「元素星名」が中国で誕生!!
      7. 西洋では、「神名星名」
      8. 中国では「旬」=10が定着で、七曜根づかず
      9. 十干十二支などの暦のうえの循環指数の計算の占術/中国
      10. インド占星術:九を基本数、羅睺らごと計都けいとで
      11. 羅睺らごと計都とは?ドラゴンヘッドとドラゴンテール
      12. 二七宿 ないし 二八宿
      13. なぜ二七あるいは二八かー月周期が27・5日であるから
      14. 空海が、インドの27宿を中国の28の名で翻訳=『宿曜経』
      15. 陰陽五行の割り当てでのこじつけ/四元説はうまく配当、五行説はこじつけに!!
  7. ホロスコープのえがき方
      1. まず、中に小円=地球
      2. 四重の円/一番外側の円は天球
      3. 水平線と子午線を引く
      4. 12に分割
      5. 東の水平線から反時計回りにⅠからⅫのハウスを記入
      6. 一二宮の記入、対象のヘリアカル・ライジングに合わせて、外から二つ分の帯を回転
      7. 七曜の記入
  8. ホロスコープの解釈の仕方
      1. 太陽星座の性格づけ
      2. おどろくいいかげんな解釈:牡羊座=羊毛から服飾関係
      3. 牡牛座=牛顔、農業関係
      4. 双子座=ピタゴラス学派の天文学・数学者
      5. 蟹座=皮膚が赤みがかり、大工・石工の職人
      6. 乙女座・天秤座・蠍座
      7. 射手座=天性の射手
      8. 水瓶座=井戸掘り、治水技術者、水道づくり
      9. 魚座:漁師、ガレー船の漕ぎ手奴隷から提督、造船家、船主、天文学者まで
      10. 解釈は無限に/太陽星座✕月星座=144通り(12✕12)
      11. 七曜全部の組み合わせは12の七乗である=人間はユニークな唯一無二の存在
      12. 遺伝的要素と環境的要素
      13. 天文学と自然科学の融合
      14. 「天体鉱物学」
      15. 占星医学「イアトロマテマティカ」
  9. ローマ時代の占星術の大流行
      1. ギリシャ人からローマ人へ
      2. ティベリウス帝の顧問トラシュロス
      3. みずからホロスコープをつくったテゥベリウス帝
      4. ローマに占星術師のサークル
      5. 星占いの禁止
      6. 死期の予測の占星術を禁止
      7. トラシュロスとティベリウス帝
      8. ホロスコープ通りに死んだトラシュロス
  10. ハドリアヌス帝
      1. 占星術愛好の三帝
      2. 叔父が占星術の心得があり、ハドリアヌスのホロスコープつくって皇帝宣言
      3. 占星術の衰退
  11. 一二世紀ルネサンス
      1. アラブ世界からの逆輸入
      2. 九世紀のイスラム科学者アブー・マーシャル
      3. 惑星の影響力という考え方
      4. 二種の影響力:接触型と媒体型
      5. 遠隔作用
      6. デカルト学派の近接作用と、ニュートン学派の遠隔作用という対立
      7. 玉ねぎ宇宙と音楽の影響
      8. 一二七七年の異端弾圧で一頓挫
      9. ロジャー・ベーコンのご都合主義
      10. ベーコンの惑星と宗教の相関
      11. 水星=キリスト教
      12. 月=反キリスト教や魔術、心霊術
      13. ベーコン=初期のスコラ学者のご都合主義
      14. スコラ学者の論理/人間の自由意志で占星術の影響を調整できる
      15. 大学に入った占星術
      16. ルネサンス・プラトニズム:アリストテレスからプラトンへ
      17. 合理主義からオカルトへ
      18. コペルニクスの革命
      19. 宿命からの解放
      20. ケプラーの挑戦
      21. プラトン主義者ケプラーが、近代科学の建設の礎石
  12. 6 近代科学からの脱落
      1. 近代科学からの脱落
  13. ニュートンの天体力学 VS デカルトの流体力学
      1. ニュートンの遠隔作用がテレパシー的と非難
      2. デカルトの近接作用
      3. デカルトの流体力学
      4. ハレー彗星のインパクト
      5. ハレー彗星の回帰発見
      6. 天王星の発見/1781年
      7. 海王星の発見/1845-46年
      8. 冥王星の発見/1930年
      9. 天王星は「機械」のパトロン
      10. 占星術は楽しいお遊び
      11. カウンセリングとしての占星術

1 カルデアの知恵

占星術師の源流は、バビロニア文化

バビロニアが一番古かったのではないかという考え方が、今では定説化している。

カルデア人とは、紀元前七世紀に最後のバビロニア帝国をたてた種族である。
彼らの国が紀元前六世紀にペルシアによってほろぼされ、遺民が西方に嗅がれてきて、ギリシャ・ローマ文化のなかにバビロニア文化の正統を伝えたものと考えられる。だから、カルデアの千栄といえば、一般にバビロニア文化のことと考えてよい。

p12

2 ギリシャ人の科学

ホロスコープ

それに対して、バビロニア起源の宿命占星術は、はっきりした特徴をもっている。ただやたらに天体によって運勢を占うというのではなくて、黄道十二宮上の七つの天体の位置を記した占星表によって占うということである。これをホロスコープという。
だから、バビロニア起源の宿命占星術をとくに「ホロスコープ占星術」と名づける。

p48

ホロスコープの登場は前二世紀のヒッパルコス以後

しかし、ひとくちにヘレニズム時代といっても、紀元前二世紀のヒッパルコス以後になってから、急にホロスコープがあらわれるようになる。

p50

体系的著書『アルマゲスト』、『テトラビブロス』

そして紀元前二世紀のプトレマイオスになると、天文学や占星術の立派な体系的著書『アルマゲスト』、『テトラビブロス』を書くまでに知識が蓄積するようになった。

p50

バビロニアの観測データ、天文常数を最初に使用/ヒッパルコス

ヒッパルコスは、バビロニアで昔から保存された観測データや、それらから計算した天文常数を、最初につかったギリシャ人なのである。

p51

プトレマイオスの「天動説天文学」のパラダイム

プトレマイオスは天文学だけでなく、占星術の分野に手をつけた。彼は今日、ヒッパルコスなどの天動説天文学を集大成し、その「パラダイム」をつくった古代の代表的天文学者として知られる。

パラダイムとは?

パラダイムとは、いまではひろく考え方の枠組みとか、政治体制とかにつかわれるが、そのもともとの意味は「科学者にある一定の期間、問い方と答え方のお手本をあたえる古典的業績」(トマス・クーン)である。

プトレマイオスの天文学の大著『アルマゲスト』

プトレマイオスの天文学の大著『アルマゲスト』は、そうした役割を科学史のうえではたして、近代になってコペルニクスの地動説パラダイムにとってかわられることになる。

p53

『テトラビブロス』

プトレマイオスの占星術の大著『テトラビブロス』

占星術のほうでは、プトレマイオスは『テトラビブロス』という仕事を残した。その冒頭で彼は『アルマゲスト』のほうは天文学というしっかりとした第一の科学であり、『テトラビブロス』の占星術のほうはそれよりも自明性が落ちる第二の科学とよんだ。

p54

『テトラビブロス』=四つの書

『テトラビブロス』とは、四つの書という意味である。その構成の第一書は占星術の一般的原理、第二書は転変占星術、第三書、第四書は宿命占星術にあてられている。

p54

第一書

第一書では、七曜の力、善悪、性、恒星の力、季節の影響、黄道一二宮の性、角度の関係など、占星術に特徴的である原理的なことをならべている。

p56

天:エーテル(アイテール)、地:火風水土の四元素/アリストテレスの宇宙観!!

彼によると、天は永遠不変のエーテル(アイテール)という物質でおおわれており、地は火風水土の四元素の層からなるという。

p56

天体の影響の順序

エーテル中の天体の運動がまず火・風の上層に影響し、そこからさらに下層の水・土の層に影響し、最後に水・土の層のなかにいる動植物に影響する。

p56

太陽:光と熱で影響、月:地上の潮汐現象で影響

太陽は光と熱によって、乾と湿、冷と熱の四つの気にしたがう地上の現象に影響する。
月の運動が地上の潮汐現象に影響するように、他の諸天体の運動も地上になんらかの影響をあたえる。

p56

アリストテレスの宇宙論(アイテールと火風水土の五元素論)

こうした考え方は、アリストテレス流の宇宙論・自然論である。プトレマイオスは、自然哲学者たちが納得できるように、アリストテレス自然論によって、占星術を解釈しようとした。

p56

玉ねぎ型の地球中心宇宙論=天動説

個々の惑星の影響も、乾・湿・冷・熱の気によって説明した。ただし、ここでの宇宙論は、われわれのそれとはちがって、玉ねぎのように惑星の層がかさなりあったものだと考えないと、理解できない。

p56

太陽:「乾・熱」

まず、太陽が熱であることは明らかである。しかし、かなりの熱をもつから乾である。

p58

月:「湿・熱」

月は地に近いから、地からあがった蒸気物で湿。それゆえ、その効果は柔らかく、ものを腐らせる。しかし、太陽から光をうけるため、かなり熱作用がある。

p58

土星:「乾・冷」

土星は、太陽の熱からも地の湿からも遠いから、冷でなかり乾。

p58

火星:「乾・熱」

火星は、……乾で燃えるような効果がある。

p58

木星:「湿・熱」

木星は、土星と火星の層の中間にあるから、適当な効果をもつ。熱と湿をもつが、その下に火星や太陽の層があることから、熱する力が大きく、実りの風をつくる。

p58

金星:「湿・熱」

金星は、木星と同じ効力と穏当な性格をもつが、はたらく方向は反対である。太陽に近いからおだやかに熱であるが、月に近くまた地上からの蒸気を利用できるから湿である。

p58

水星:「乾・湿・冷・熱」

水星は、あるときは太陽に近づきその熱をうけて乾、あるときは月や地球に近づき蒸気を受けて湿、同様に熱でもあり、冷でもある。水星が太陽の近くを動く速度によって、その効果は急速に変化する。

p58

「湿・熱」=善、「乾・冷」=悪

こうした乾・湿・冷・熱の四つの気のうち、湿と熱は、ものを集め一緒にするよい気である。逆に乾と冷は、ものを分かち破壊する悪い気である。

p58

善星=「木星・金星・月」、悪星=「火星・土星」、両義的星=「太陽・水星」

だから、木星と金星と月はよい星、土星と火星は悪い星である。太陽と水星は善悪の両性を持ち、関係する他の惑星の性質によってどちらの効力もおよぼす。

p58

女性=「月・金星」、男性=「太陽・火星・木星・土星」、両性具有=「水星」

また、自然にも男女の性があると考える。湿は女性がもつものだから、月と金星は女性になる。ほかの太陽・火星・木星・土星は男性となる。そして水星は、乾気も湿気もつくるので両性を有する。このようにして、惑星の性格づけがおこなわれていくのである。

p59

第二書:自然占星術・天変占星術

第二書では、自然占星術ないし天変占星術であるが、これも天変の影響をすぐ人間の行為に直結させるよりも、いったん自然的事象のうえにうけとめて、しかりのちに人事への影響を論じようとする。

p59

第二書:国や市のテーマ=君主と家族→今日の気象的なテーマ

国や市に関係する一般的テーマをあつかうが、すでに東洋的専制君主の時代ではない。君主やその家族のことよりも、戦争、飢餓、疫病、地震などを対象とする。また年間のどんど変化、嵐や暑熱の強さ、収穫の豊作・不作などの周期的現象など、今日の気象的なテーマもあつかうことになる。

第三書:遺伝的・先天的な事柄、第四書:人為的・後天的な事柄

第三書、第四書は、宿命占星術にあてられる。第三書は両親、兄弟、姉妹、寿命など資質的・身体的なことがら、第四書は名誉、出生、結婚、旅行など社会的・人為的なことがらをとりあげる。

p59

その人の生誕時のその星のヘリアカルライジングによって占う

では、このように多様なテーマは、どのようにして占うことができるのだろうか。プトレマイオスは、占うべき人が生まれたときに東にのぼる、黄道上の星にまず注目する。その星があがる前が両親、あがる前後が兄弟に関係する。

p60

アリストテレス自然論(誤謬)で、バビロニアの占星術師データを解釈=理論破綻

プトレマイオスは『テトラビブロス』で、アリストテレス自然論と宿命占星術という、二つの全く独立なシステムの統一をめざし、前者によって後者を説明しようとした。しかし、両者は容易に統一できるものではなく、彼は所々でうまく説明できないまま、ごまかしている。

p60

プトレマイオス『テトラビブロス』の問題点

誤った独善的なアリストテレス自然論で、バビロニア占星術師が集めた統計学を解釈しようとしたところに破綻をきたしたと解釈できる。

自然は地水火風の四元素の相互影響が成り立つというテーラワーダ自然説によって説明されるべきであるが、第五の元素アイテール=エーテルを持ち出して、それを四元素の上に、つまり超越的位置に置いた。
それは、人間に残虐であるエンリルであり、アテーナー一神教のアテーナーであり、中華思想では、五黄である。

本来友愛的な視点から、つまりピュタゴラス的自然論で説明すべきであろう。

死は計算可能か?/寿命の計算の仕方をながながと

彼は『テトラビブロス』の第三書で、寿命の計算の仕方をながながと述べた後、終わりちかくに、「死の性質について」という章を配している。

p61

死因の占い/出生時の西の空に沈みゆく星で占う

死因を決定する主役は、占うべき人が生まれたときに西の空に沈みつつある星である。

p61

3 ホロスコープの技術

ホロスコープの定義

ホロスコープのホロとは時間を意味し、ホロスコープ点とはもともと、生まれたときに黄道上の星が東の水平線にのぼる点のことをいった。
そのホロスコープ点という言葉が、ギリシャ・ローマの頃に、七曜の位置によって個人の運勢を占うための図表を意味するようになった。

p65

ホロスコープのつくり方、その原理

ホロスコープのつくり方

われわれはここで、しばらく歴史的叙述をはなれて、ホロスコープのつくり方、その原理を述べておこう。

p65

黄道一二宮=獣帯

そのもっとも大事な概念は黄道一二宮(獣帯)である。

p65

ホロスコープづくりのイロハのイ:黄道一二宮上に太陽の位置をあらわすこと

占星術師が最初にすることは、黄道一二宮のうえに生誕時の太陽の位置をあらわわすことである。

p65

太陽の観測方法

もちろん太陽が照っている昼間に、太陽が恒星とどうい位置関係にあるかをたしかめることはできない。ただ、太陽が沈む頃や日の出の頃に、まだ太陽が地平線の下にあるときは、天はかなり薄暗く、明るい星なら見えている。そこで太陽と星の相対的な位置を決めることができる。

p66

黄道を描き、12の宮に分割

こうして太陽を観測し、一年間に太陽が星のあいだをぬって動く道筋をえがく。この道を黄道という。その行動を一二の部分にわけると、太陽はそれぞれの宮にほぼ一ヵ月とどまる。

p66

度数

より厳密には、それぞれの星座で基準になる代表的な星を決めて、その宮に入ってから何度というように、度数で位置をあらわす。

p66

春分の星座=牡羊座を起点に性を割り当て

春分のときに太陽の位置する星座である牡羊座を男性とし、それからはじめて、かわるがわる一二宮の各星座に男女の性をわりあててゆく。

p66

ピュタゴラス学派の術数で、奇数=男性、偶数=女性

ピタゴラス学派の術数によれば、奇数は男性、偶数は女性に配当されているからである。

p66-69

七曜と一二宮の対応のいいかげんさ

七曜と黄道一二宮の対応は、次のようになる。一年のうちもっとも昼が長くなるときに太陽が位置するのは、蟹座と獅子座で、それは夏の暑さを生む。そこで、もっとも明るい太陽と月がわりあてられる。太陽は男性だから獅子座、月は女性だから蟹座になる。

その他の一〇の宮には、五惑星を対応させる。まず、土星は冷だから、獅子座・蟹座の正反対である山羊座・水瓶座をわりあてる。木星は土星のすぐ下の層にあるから、山羊座・水瓶座の次の星座である、射手座と魚座をわりあてる。以下同様に、火星、金星、水星とつぎつぎにわりあてていく。

p69

アスペクトのいいかげんさ

それからあいだの角度が120度、240度となっている星座(牡羊座なら獅子座と射手座)がもっともよい「アスペクト(位置関係)」と称する。

また黄道一二宮でいえば、二宮ずつあるいは四宮ずつはなれた星座は同性だから、相性がよいとされる。逆に90度はなれた星座は異性であるから、敵対的であると解される。

180度はなれた相対する星座は、実は同性なのだが、この場合はなぜか敵対的で相性が悪いとされる。『テトラビブロス』も、そこのところをうまく説明できず、ごまかしている。そもそも同性が相性がよく、異性が敵対的というもの、おかしな説明である。

p69

「ハウス=位」の概念の整備/ローマ時代

黄道一二宮に加えてもうひとつ重要な概念は、ローマ時代に整備されたもので、ラテン語でドムス、英語ではハウスといい、日本語では「舎」、あるいは日本で現存最古のホロスコープ(王朝期)では「位」と訳されるものである。

p70

12の占うアイテムを占える場所

一二の占うアイテムを、一二位のそれぞれの場所で占えるようになった。

p70

一二位は内円:反時計回り、黄道一二宮は外円:時計回り

一二位とは、天体が地上にあがる東の点から、時計と反対まわりに、一二に天をわけたものである。

内側の円は固定した一二位の円で、外側の円である黄道一二宮は矢印の方向に一日一回転する。

p70

占星術の中国伝播の諸相

一二と七/割り切れないへんな数「七」、中国は十進法

ホロスコープ占星術で重要な数は、一二のほかに七である。七という数は割りきれもせず、ずいぶん変な数である。ちなみに西洋の週に相当するものは、中国文化圏では一〇進法を単位とする、上旬・中旬・下旬の旬であらわすが、こちらのほうが合理的に見える。

p76

「七」=ユダヤ・キリスト教の「ウィーク」の数

七はユダヤ=キリスト教のなかで伝えられた週(ウィーク)の七である。

p76

「七」=七惑星の数

一方、ウィークとはなんの関係もないが、肉眼で天を見ていた古代中世では、天で動くものは太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星の七つしかなかった。

p76

「七曜」/バビロニア起源がインド経由で、『宿曜経』の翻訳で中国へ/8世紀

太陽と月と五惑星をあわせて七曜といういい方は、中国にも昔からある。が、それとは別に、中国にも西洋から七曜がもたらされている。より厳密にいえば、バビロニア起源でヘレニズム時代にインドにもたらされたホロスコープ占星術が、八世紀に不空が中国語に翻訳した『宿曜経』などの仏典を通して中国に翻訳されたのである。

p77

ユダヤ・ヘブライ文化の「週のシステム」/西域経由で中国へ

その頃、ユダヤ・ヘブライ文化に特徴的な産物である週のシステムも、西域から絹の道を通ってもたらされた。そしてこの両者の伝統が中国で合体して、日曜、月曜というような、日月火水木金土の週の配列が、その暦のなかに入った。それは空海によって、真言密教とともに日本にももたらされた。

p77

バビロニア占星術・天文学の伝播

道教のもとになった道家思想=老荘思想の時代、諸子百家の時代=前六世紀には、伝播していたと推定される。
道教は、前六世紀に滅んだカルデア人王朝の残党=ナボニドゥスとベルシャザル父子を戴く「広義のフェニキア人」によって伝播したと想定される。

それ以前、殷王朝=商王朝こそ、「広義のフェニキア人」の立てた王朝と想定される。
二里頭文化=夏(前1600-1400)と措定すると、夏は、テラ島大噴火=前1628年の民族移動で成立し、1400年頃、北方経由の「月読」集団によって滅ぼされたと想定される。
さらに「前一二〇〇年のカタストロフ」で、新ヒッタイト人としてのテーバイ帝室系「広義のフェニキア人」が移動して、周に交代した。
「広義のフェニキア人」=羌族と想定され、殷、周、秦の王族はそれであろう。
前六世紀、テーラワーダ仏教が成立すると、タレスによって西洋では哲学が発祥し、道家によって「広義のフェニキア人」の宗教=汎神論が東洋では発祥した。
前れ以前、殷王朝=商王朝こそ、「広義のフェニキア人」の立てた王朝と想定される。二里頭文化=夏(前1600-1400)と措定すると、夏は、テラ島大噴火=前1628年の民族移動で成立し、1400年頃、北方経由の「月読」集団によって滅ぼされたと想定される。さらに「前一二〇〇年のカタストロフ」で、新ヒッタイト人としてのテーバイ帝室系「広義のフェニキア人」が移動して、周に交代した。「広義のフェニキア人」=羌族と想定され、殷、周、秦の王族はそれであろう。前六世紀、テーラワーダ仏教が成立すると、タレスによって西洋では哲学が発祥し、道家によって「広義のフェニキア人」の宗教=汎神論が東洋では発祥した。
前三世紀、始皇帝によって道教が国教とされ、バビロニア天文学・占星術が盛んになる。
紀元後8世紀に突如、伝わったわけではない。

五行=木火土金水から「元素星名」が中国で誕生!!

なお、五惑星については、中国の伝統的なよび方としては、水星は辰星しんせい、金星は太白たいはく、火星は熒惑けいごく、木星は歳星さいせい、土星は鎮星ちんせいというようによばれていた。それが木火土金水の五行に対応させられて、火星、水星などとよばれるようになった。

p77

西洋では、「神名星名」

西洋でも日曜が太陽、月曜が月には対応するが、五行説がないために、火星が火、水星が水、木星が木、土星が土に対応するということはない。西洋では惑星は、星の神の名で呼ばれる。

p77

中国の「元素星名」の起源はやはり、バビロニア占星術

西洋では合理的な「元素星名」ではなく「神名星名」であるが、そもそも、中国の星名の付け方は、バビロニア占星術の神に対応する徳の名が星につけられたハッラーンの占星術から来ているだろう。

バビロニアではマルドゥクは木徳の神である。だから木星に対応する。木曜日に対応。
ナブーは水徳の神で、水星に対応し、水曜日に。
ネルガルは火徳の神で、火星に対応、火曜日に。
ニヌルタは土徳の神で、土星に対応、土曜日に。
イシュタルは金星で、金曜日に。

だからこそ、太陽=日曜が必ずしもナンバー1ではない。
バビロニアでは、マルドゥク=木徳の木曜の神がナンバー1
中国の五行の五黄、木火土金水の筆頭が甲であることは、バビロニア占星術からのマルドゥク=主神の影響であろう。
北欧では、太陽神バルドルは弱小の神であり、火神ロキに殺される。
水神オーディンが主神で、水曜日に相当。
アテン教=ミトラ教=キリスト教では太陽がナンバー1で日曜日。日曜が休日で安息日というのは太陽信仰であるキリスト教の立場である。
元来のユダヤ教の安息日は、土曜日=サバトである。
これが、魔女の安息日にされたわけだ。

中国では「旬」=10が定着で、七曜根づかず

七曜はもたらされたものの、東洋ではすでに旬が定着していたから、週は根づかなかった。また七曜は、仏教系の儀式やホロスコープ占星術につかわれるだけであった。

p78

十干十二支などの暦のうえの循環指数の計算の占術/中国

また東洋では、ホロスコープ占星術と基本的発想はおなじであるが、生まれたときの七曜の位置よりも、生年月日と、時刻の四つにつけられた十干十二支などの暦のうえの循環指数の計算で運勢を占う、伝統的な暦占(四柱推命術や高島易断など)が勢力をはっていたから、西洋伝来のホロスコープ占星術は影が薄くなり、いったんその伝を絶った。

p78

インド占星術:九を基本数、羅睺らごと計都けいとで

もうひとつ、インドから中国・日本へと伝わるホロスコープに、七よりも二つ数の多い九を基本の数とする、西洋にない伝統が生まれた。その二つとは、七曜のほかに羅睺らご計都けいとである。

p78

羅睺らごと計都とは?ドラゴンヘッドとドラゴンテール

これらは仮想の天体である。インドの説話では、太陽と月の軌道の交点に魔物がすんでいて、日月を喰う(それが日月食だというわけである)。太陽の軌道(黄道)と月の軌道(白道)との二つの交点(昇交点と降交点)が、その魔物(ドラゴン)の頭と尻尾にあたる。それがこの二つの仮想の天体だという。

くわしくは矢野道雄『密教占星術ー宿曜道とインド占星術』(東京美術選書)……を見られたい。

p78-79

二七宿 ないし 二八宿

九曜とならんで、もうひとつ、インド・中国・日本の天文学・占星術にあって西洋にないものは、二七宿ないし二八宿である。

p79

なぜ二七あるいは二八かー月周期が27・5日であるから

なぜ二七あるいは二八かというと、月が天を一周するのは二七日半だからで、宿というのは、月が毎日泊まる宿ということである。中国では古くから二八宿で天の一里塚としていたが、インドではそれを二七とした。

p79

空海が、インドの27宿を中国の28の名で翻訳=『宿曜経』

弘法大師がインド系占星術をはじめて日本にもたらしたのは、『宿曜経』である。そのなかでは、インドの二七宿(ナクシャトラという)を、中国流の二八宿に翻訳している。中国に伝統的な二八宿のよび名をあてているが、一つあまるので、牛宿がとばされた。

p79

陰陽五行の割り当てでのこじつけ/四元説はうまく配当、五行説はこじつけに!!

中国に陰陽五行説という自然哲学原理がある。……いわばすべての対をなす現象に対して、どちらが陰でどちらが陽か配当を決めねばならない。

それが五行説になると、もっとこじつけがひどくなる。たとえば春夏秋冬の四季は、西洋流の四元説ならちょうどうまくあうのだが、五行に配当するとなるとかなり無理がある。四季には火水木金を対応させ、そのあいだ、あるいは一年のある特定の一ヵ所に、土用を割りこませて、なんとかつじつまをあわせることになる。

p80-81

ホロスコープのえがき方

まず、中に小円=地球

まずコンパスで小さい同心円を二つえがく。一番内側の小円は地球をあらわす。

p82

四重の円/一番外側の円は天球

次に外側に大きな同心円を二つえがく。一番外側の円は天球をあらわす。

p82

水平線と子午線を引く

三番目に、四つの円を結ぶ直線を引く。まず、真横に一本、これは水平線を示す。次に垂直に一本、これは子午線(北極星を通って南北に引いた大円)を示す。

p82

12に分割

そして縦横の線のあいだを30度ごとにわける直線を引く。かくして、地球と天球を結ぶ線が一二本引ける。

p82

東の水平線から反時計回りにⅠからⅫのハウスを記入

二つの小円のあいだの一二の区画には、一二位をあらわすローマ数字をⅠからⅫまで入れる。その順序は、東の水平線の下を第1位とし、以下左まわりに第Ⅵ位まで地下を通って西の水平線にいたる。その後は、……地球を一周する。

一二宮の記入、対象のヘリアカル・ライジングに合わせて、外から二つ分の帯を回転

大きな二つの円のあいだには、天上の一二宮を、どこからはじめてもいいから一二位と同じく左回りに、牡羊座、牡牛座、双子座……と入れていく。そして、占うべき人が生まれた時刻に東の水平線にどの星座があったかを調べて、外から二つ分の帯を回転させて合せる。

七曜の記入

そして最後に、外から二つ目の帯に、生まれたときの、日月五惑星の黄道一二宮上の位置をプロットしてゆく。

ホロスコープの解釈の仕方

太陽星座の性格づけ

もっとも簡便な占星術師解釈は、生誕時に太陽がいる黄道一二宮による性格づけからはじまる。

p86

おどろくいいかげんな解釈:牡羊座=羊毛から服飾関係

たとえば……牡羊座に太陽があるときに生まれた人は、羊毛に関係があるので、服飾産業に入ると成功する。……
その性格はすべて羊からの連想で、……。

p86

牡牛座=牛顔、農業関係

牡牛座に生まれた人は、顔が大きく、眼も大きく、鼻が開いて、上半身が発達し、身体が大柄にできている。これも牡牛からの類推である。マニリウスの詩には、この星座に生まれた者農業者になるとある。牡牛が鋤を引くからで、彼らは平和な定住者となる。

p86

双子座=ピタゴラス学派の天文学・数学者

双子座の双子とは、……マニリウスによれば、……怠け者の音楽家で、戦士のトランペットよりも平和な竪琴を好む。また音と数の関係を論じたピタゴラス学派の天文学・数学者になる。

p86

蟹座=皮膚が赤みがかり、大工・石工の職人

蟹座に生まれた者は、身体が小さく皮膚が赤みがかり(蟹をゆでると赤くなるから)、骨太で関節が大きい。パリのノートルダム寺院にある黄道一二宮の蟹座のところには、大工・石工の職人の図が彫られている。

p86-87

乙女座・天秤座・蠍座

乙女座……「正義の神」
天秤座……秤をつかう銀行家
蠍座……戦士、ボクサー、毒殺者、殺し屋。

p87

射手座=天性の射手

射手座……天性の射手むき……

p87

水瓶座=井戸掘り、治水技術者、水道づくり

水に関係する職業につく。井戸掘り、治水技術者、水道づくり……

p89

魚座:漁師、ガレー船の漕ぎ手奴隷から提督、造船家、船主、天文学者まで

魚座生まれは、当然漁師になる。そのほかにも、魚屋、船長、海賊、提督から奴隷までガレー船にはたらくありとあらゆる種類の人、造船家、船主にもなれる。……天文学者、地理学者、気象学者にもなれる。

解釈は無限に/太陽星座✕月星座=144通り(12✕12)

たとえば、生まれたときに月が黄道一二宮のどこにあったかを考慮に入れてみる。すると、太陽のそれと組みあわせれば、一二かける一二で、合計一四四通りの占いができる。

p90

七曜全部の組み合わせは12の七乗である=人間はユニークな唯一無二の存在

そのほかの惑星の、生誕辞における黄道一二宮上の位置を加えると、一二の七乗、三五八三万一八〇八通りになる。

p90

遺伝的要素と環境的要素

人生が、生まれたときの星の位置・配置によって本当に決められてしまっているものなら、一度占い師に見てもらえば二度と見る必要がない。しかし、それでは占星術師は商売にならない。そこで、生まれたときのホロスコープと、、占うべき将来の星をプロットしたホロスコープとをつきあわせて占うこともはじまった。

p91

天文学と自然科学の融合

地上をあつかう自然学のすべてが、天上をあつかう天文学と結びつく可能性がある。

古代から「天体鉱物学」とか「天体化学」という学問が発生しかけていた。

p92-93

「天体鉱物学」

バビロニア地方では、古くシシュメールから、鉄を「天から来た金属」とよんでいた。隕石のなかにふくまれる鉄、あるいは隕鉄が知られていた証拠である。
あるいはさらに、金は太陽、銀は月から来た、という。

p93

占星医学「イアトロマテマティカ」

占星医学の登場である。

伝説的にエジプトのヘルメス・トリスメギストスがその息子の医師アスクレピオスに下しあたえたものからきているとされる。

p96

ローマ時代の占星術の大流行

ギリシャ人からローマ人へ

ちょうどバビロニアから来た「カルデア」人が、ギリシャ人のあいだに天文学や占星術を伝えたように、ギリシャ人が、ローマ治下に天文学・占星術を伝えた。ギリシャ語文献はラテン語に翻訳された。

p98

ティベリウス帝の顧問トラシュロス

キリスト生誕の前後に活動期をもったトラシュロスは、当時最大の占星術師として名をなした。彼はティベリウス帝の友人であり、顧問であった。
トラシュロスはアレクサンドリアの学者で、文法を専門としていた。彼はロドス島に居を定めた。ロドス島はかつてヒッパルコスが天体観測をしたところであるが、有名なストア派の学者ポセイドニオスもいたところで、その知的な雰囲気は学者の住むところとして魅力があった。

p98

みずからホロスコープをつくったテゥベリウス帝

ティベリウスはトラシュロスに占星術を習い、みずからの運命を計算した。

p99

ローマに占星術師のサークル

トラシュロスも、ティベリウスの復権とともに、側近として迎えられた。

『アストロノミカ』という占星詩をつくったマニリウスも、そのサークルの一人である。

p99

星占いの禁止

紀元一一年、まったく新しい政策が、占い師、とくに占星術師に対して施行された。アウグストゥスは、ローマやイタリアにかぎらずローマ帝国の全域に対して、ある種のトピックについては、占いの依頼をうけることを禁じる勅令を出した。

p101

死期の予測の占星術を禁止

誰でも君主の正確な誕生の時刻を知りさえすれば、その運命、死の時刻まで計算できるのである。すると、社会不安をかもす。

その死が近づいてくるにつれて、人はノイローゼになる。死期を知っている文化は暗いのである。

p101-103

トラシュロスとティベリウス帝

ティベリウスは王位継承の資格者をはじめ、皇族、重臣など用心のホロスコープをみずから計算し、それをトラシュロスの計算とあうかどうかチェックしてから、判断をくだすのをつねとした。

p107

ホロスコープ通りに死んだトラシュロス

トラシュロスは彼自身のホロスコープ通りに、紀元三六年に世を去った。その翌年にティベリウスも薨去した。

p108

ハドリアヌス帝

占星術愛好の三帝

ローマの皇帝でとくに熱心な占星術の信者といえば、前述のティベリウスとドミティアヌス、ハドリアヌスの三帝である。ドミティアヌスが、占星術で予言された自分の死期近くになるとノイローゼになり、結局その時刻に刺客に暗殺される悲劇は有名である。ここではハドリアヌスについて述べよう。

p108-109

叔父が占星術の心得があり、ハドリアヌスのホロスコープつくって皇帝宣言

ハドリアヌスの叔父は占星術の心得があり、彼が生まれたときにそのホロスコープをつくって、この子は皇帝になる相があると宣言した。

p110

占星術の衰退

宿命占星術を真剣に考えた皇帝は、二世紀のハドリアヌスをもって最後とし、以後、一般にギリシャ・ローマ文化の衰退期にはいる。

p114

一二世紀ルネサンス

アラブ世界からの逆輸入

まず、アラブの占星術師が、ラテン社会の権力者のホロスコープをつくって占ってやる。つぎにその占いの本を翻訳する。そして最後に、原理的な書物が翻訳されることになる。

プトレマイオスの著書もそうであった。現在の研究では、天文学の『アルマゲスト』が一一六〇年、占星術の『テトラビブロス』がそれより前の一一三八年に訳されたということになっている。

p122

九世紀のイスラム科学者アブー・マーシャル

なかでも中世西洋の学者にとって、もっとも影響力のあったものは、九世紀のイスラム科学者アブー・マーシャル(西洋ではアルブマサールとよばれる)である。彼の著作『占星術華集』は一一三〇年頃ラテン語に訳され、……
このため、『占星術華集』は以後の中世スコラ学者をおおいに刺激し、また実際の星占いにもちいられた。

p123

惑星の影響力という考え方

惑星は恒星のあいだをぬって動いている。それはみずからの力によるのだ。力をもっているものは、影響力もあるはすだ。こうした考え方は、どうもインドから来たものらしい。

p125

二種の影響力:接触型と媒体型

影響力といっても、二種類のはたらき方がある。接触によるものと、媒体を通じてのものとである。

p125

遠隔作用

これに対し、太陽・月・惑星が地上から遠くはなれているのに影響をおよぼすのは、ちょうど光が伝わるようにその間の媒体を介して力が伝わるのだ。これを遠隔作用という。

p125

デカルト学派の近接作用と、ニュートン学派の遠隔作用という対立

この両者は、のちに一七世紀の近代科学の成立期に、宇宙の運行をめぐってデカルト学派の近接作用と、ニュートン学派の遠隔作用という対立にもちこされる。この対立は、結局は後者が勝つことになるのだが、両者の考え方がすでにアブー・マーシャルに述べられてる。

p125

玉ねぎ宇宙と音楽の影響

しかし、彼らの宇宙観はわれわれのそれとはずいぶんちがっている。まず第一に、星はみんな、地上からあまり遠くないところを、透明の水晶の球殻に張りついてまわっていると考える。第2章でこれを玉ねぎ宇宙といったが、玉ねぎの皮は透明であり、惑星はすべてみずから発行して透明の殻を通って地に達するとされる。

p126

一二七七年の異端弾圧で一頓挫

アブー・マーシャルの権威は、当時神学で名声のたかかったパリ大学における一二七七年の異端弾圧で一頓挫した。

p126

ロジャー・ベーコンのご都合主義

一三世紀のロジャー・ベーコンは、惑星が天の一点に集まる大会合が歴史の転換の契機になるという、アブー・マーシャルの占星術が気にいっていた。

彼はそれをつかって、キリスト教がほかの宗教よりすぐれている点を証明し、キリスト教の強化に役立たせようとした。

p130-131

ベーコンの惑星と宗教の相関

彼は、木星が会合する惑星をそれぞれの宗教にわりあてる。

土星はユダヤ教、火星はカルデア人の法、太陽はエジプト人の法、金星はアラブ人の法、水星はキリスト教の法にかなう。

p131

水星=キリスト教

水星の運行は、……惑星のなかでもっとも複雑でむずかしい。……それだけ深みのある真理をふくんでいる。だから水星にキリスト教をわりあてよう。

p131

月=反キリスト教や魔術、心霊術

ところが月となると、その動きはさらに複雑で、気まぐれで、どうも法則にしたがっているとも思えない。だから、これは反キリスト教や魔術、心霊術のたぐいにわりあてよう。

p131

ベーコン=初期のスコラ学者のご都合主義

どうもベーコンの以上のような議論は、初期のスコラ学者のおおらかでナイーヴなご都合主義をあらわしているようである。

p131

スコラ学者の論理/人間の自由意志で占星術の影響を調整できる

同じ世紀のアルベルトゥス・マグヌスは、占星術が、キリスト教徒のいう人間の自由意志や行動の自由と矛盾するものではないと論じた。太陽の影響は誰もがうけているが、傘をさせば光をさえぎれるではないか。つまり、天体の影響はたしかにあるが、それを防いだり、調節したりする装置を人間はもっているというのである。

p131-132

大学に入った占星術

ギリシャ以来の西洋教育史の伝統のなかでは、プラトンのクワドリウィウム(数学四科=算術、幾何、天文、音楽理論)が教養課程でおこなうべき基礎教育としてとりあげられる。そのなかの天文という学問は、占星術が教育制度のなかに入りこむ橋頭堡になった。占星術教育のテキストとしては、『テトラビブロス』が講じられることが多かった。

p133

ルネサンス・プラトニズム:アリストテレスからプラトンへ

中世のスコラ学がアリストテレスの学統を主流としていたのに対して、プラトンの学統を称揚することである。

p138

合理主義からオカルトへ

一応、アリストテレスやスコラ学のように論理を重んじる合理主義に対して、魔術・オカルト・神秘をうけいれられるプラトンの精神主義を対置することができよう。

p139

コペルニクスの革命

しかしコペルニクス説では、太陽も月も惑星のメンバーからはずれ、そのかわり、われわれの地球がその一員として参加する。

p145

宿命からの解放

コペルニクスの宇宙モデルだと、惑星間の相対距離が三角測量ではかれる。

すると、そんな遠いところにある星が、どうして地上に影響するのかあまりピンとこなくなる。
星の影響からわれわれはついに解放されたのだ、宿命からまぬがれたのだ。そう実感する人が、コペルニクス説が普及するにつれて、だんだん多くなってきた。

p147

ケプラーの挑戦

ケプラーはプラトン主義者である。……万物は数学で表現できると信じたピタゴラス学派だといってもよい。……そして占星術に理論的基礎をあたえようとした。

p148-149

プラトン主義者ケプラーが、近代科学の建設の礎石

だが、彼のプラトン主義は、大部分失敗に終わった。現象の背後に、なにかすばらしい法則がはたらいているのではないかと、思弁・空想をめぐらしたが、大部分はうまくはいかなかった。
しかし、そのなかで、ケプラーの三法則といわれる惑星運動の法則は、純粋に天文学の分野のものなので、大成功となって近代科学の建設の礎石となった。

p149-150

6 近代科学からの脱落

近代科学からの脱落

一七世紀末には、占星術は「科学と袂を分かった」。これを近代科学の側から見れば、占星術は「科学から脱落した」ということができる。

p158

ニュートンの天体力学 VS デカルトの流体力学

ニュートンの遠隔作用がテレパシー的と非難

おもしろいことに、占星術を科学の世界から追いだしたはずのニュートンが、同僚の近代科学者から占星術的だと非難されたことがある。彼の説く遠隔作用が、テレパシーのようで理解しにくかったからである。

p160

デカルトの近接作用

ただ、「力」といっても前述の近接作用の場合なら、圧力や衝撃として実際に肌で感じることができる。だから、デカルトの近接作用による宇宙の説明のほうが、直観的にはわかりよかった。

p160

デカルトの流体力学

デカルトは、宇宙に粒子がぎっしりつまっていて、それがつぎつぎと接触していって力を伝えると考えた。

p160-161

もし流体力学が天体力学より先に、つまりデカルトのモデルのようがニュートンのモデルよりも優先してパラダイムとして採用されていたら、近代科学の発展の方向も、いまのものとはずいぶん変わっていただろう。

p161

デカルトの流体力学(近接作用)のモデルは、奇蹟を説明できる!!

ニュートンの遠隔作用は、神頼みモデルである。
しかし、デカルトの近接作用は、自分の直近の「粒子」に音波で影響を与えることで、現実できる「引き寄せの法則」を説明できる。自力本願のモデルである。

日蓮大聖人の革命もまさにそれで、念仏の音波リズムを弾劾し、題目の音波リズムで、近接作用で、奇蹟を自力で起こすメカニズムである。

ハレー彗星のインパクト

彗星で有名になったハレー氏がニュートンのところにやってきて、ニュートンが占星術を信じているのをしかりつけた。すると、ニュートンがハレーに「私はそれを研究したが、あなたはしていない」といった、という伝説が書かれている。

このハレーも、近代科学が占星術を排除していくのに、一役買っている。

p165

ハレー彗星の回帰発見

ニュートンの天体力学にしたがってその回帰が予測され、ハレーが観測的にたしかめたのである。

かくしてその彗星はハレー彗星と名づけられ、彗星の天変性を主張する既成の占星術師に深刻にダメージをあたえることになった。

p165-166

天王星の発見/1781年

まず、ウィリアム・ハーシェルが、一七八一年に土星の外をまわる惑星を発見して、これをウラヌスと名づけた。漢字文化圏ではそれは天王星と翻訳された。

p166

海王星の発見/1845-46年

一八四五年から四六年にかけて、この過程の位置に望遠鏡をむけると、はたせるかな惑星が発見された。これを海王星という。

p167

冥王星の発見/1930年

そして、二〇世紀になって、一九三〇年にパーシヴァル・ローウェルが予測した場所に、さらにもうひとつの惑星が発見された。この惑星には、冥王星という名があたえられた。

p167

天王星は「機械」のパトロン

占星術の世界では、各惑星は神々を通じて、地上のなにかのパトロンになっている。そこで、天王星は「機械」のパトロンとする、と解釈された。

p168

占星術は楽しいお遊び

しかし、大部分のメディアの反応は、占星術は楽しいお遊びではないか、そのささやかな庶民の気晴らしのタネをとりあげるとは野暮のきわみだ、というものだった。

p181

カウンセリングとしての占星術

天文学史の講義をしてほしいという声がかかった。
天文学史は私の専門とするところだが、そういう専門的テーマの講義を依頼するところはめったにないので、快諾した。ところがしばらく講義をつづけているうちに、聴衆は天文学よりも占星術に関心があることに気づいた。

p189

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